2016年8月4日木曜日

子連れフランス旅日記 <村にサーカスがやって来た編>

ぼんそわ〜。
毎日、日本は暑いと聞いております。
こちら、南仏セヴェンヌは、毎日からっと晴れて、24〜26度くらい。
冷房いらずの快適な気候が続いています。
ヤングが来たときは、なんだったんだろう。雨だし寒いし、雨男ぶり健在。

今夜も、しいたけみたいな香りとコクのある美味しいチーズをお供に、箱ワインをガブガブ飲んでおります。

さて、気付けば8月。
息子との旅も、三分の一を過ぎようとしているところ。
その後の出来事を、つらつらと・・・。

この小さな村にも、ランダムに娯楽がやってくる。
興行の数日前から、村のあちこちにサーカスのポスターが貼り出された。
サーカス未体験の息子は、ライオンや象、ピエロのイラストに心躍らせ、指折りサーカスの登場を待ちわびていた。
私も、ワクワクしていた。
サーカスなんて、何年ぶりだろう・・・。親戚のお姉さんに、木下大サーカスに連れて行ってもらったのは、小学生か、はたまた年長さんか。
トラが火の輪をくぐり、バイクが球形の檻を走り回った、あのときの迫力ったら。息子もさぞかし喜ぶことだろう・・・。

このごろお兄さんぶりが板について、息子とよく遊んでくれるW君に、「行くの?」と聞いたら、はあ?みたいな反応。
ちっちゃい子が喜ぶヤツだよ、と言う。
そ、そうなのかな・・・。
 息子は「サーカス♪サーカス♪」と嬉しそう。

前日に、真っ赤なトレーラーが2台やってきて、設営の準備。
そうそう、サーカスといえばこういう感じ!いい色だなあ、フランスはおしゃれだなあ、なんて眺めていた。
 「来ました!サーカス♪」

予想した5分の1くらいの小振りなテントに、息子といそいそと入っていった。近所の子供たちが集まっている。

肩寄せ合って、始まりを待つ。

やがて始まった演芸。

出て来たのは、まず、小さな馬。

 芸は、おじぎ・・。

そして、ラマ。

特に芸はなし。

すべての演目を、少しくたびれた感じの夫妻が代わる代わるで担当。
奥さんは、集金してから着替えて、お手玉を披露。
お手玉の段階で、何度か玉を落とし、ひやひやさせられた。その後に、火のついた棒でジャグリング・・・。


数回で、すぐにやめてしまう奥さん。


その後登場した黒ヤギ。
登場したとたんに、脱糞!!



「わあ!カカ(仏語でう○ち)!!」と息子たち。


 満を持して登場したのが、夫妻の子供たち。
3人きょうだい。
特に運動ができるわけでもない長男が、父親の誘導で少しマット運動的なものを披露。


 この出し物の時点で、息子が「サーカスまだ始まらない?」・・・。

観客たちも、かなり飽き気味。
子供たちから、「エレファン!エレファン!」と声が上がる。

そうだよ、ポスターには、象とライオンが描いてあったではないか!

やがて、ダンナの方が急いで扮したピエロ姿で登場。
急いでいたのでメイクが粗い。


観客から、2人の女の子を選び出した。

「何という名前?何歳?」などとサービストーク。


すると、彼女たちを順に並べ、上から布をかけたではないか!!

象の着ぐるみ・・・・。


「ええええ!?」息子も愕然。

これが、象。

そして、その後、ライオンが出ます、的なことを言って、出て来たのが、ライオンという名を付けられた猫。


 階段を上ったり降りたり・・・。

ショーのハイライトには、ダンナが上海雑技団のように椅子をいくつも重ねて、その上で逆立ちをしていった。のだけど、酒とタバコと脂っこい食事が大好きなんだろうなあ、ダンナ、お腹が出てしまっていて、脂汗ボタボタ。見ているこちらがヒヤヒヤした。

最後に、しょーもないオモチャをいっぱい並べた箱を出して来て、「2ユーロで子供たちに1つ、好きなものを選ばせるコーナー」開始。
こんなもん誰が欲しいもんかよ〜、と思っていたら、なんだろう、娯楽が少ないからかなあ、村の親御さんたちは皆、子供に2ユーロを握らせて、ステージへ押しやった。
「オレもやりたい!」
と息子。
しかし、私は2ユーロも渡す気になれなかった。
「やめておこう、ね」
「え・・なんで」

結局、オモチャ配布コーナーに行かなかったのは、その場でうちの息子だけ。
「オレはもらえないんだ・・・」
涙目の息子。

なんだか、この世界で、一番貧しい家族になったような気持ちで、ぐっと胸が詰まった。
しかし、こんなところで無駄遣いするわけにはいかない。まだまだ旅は始まったばかりなのだから。


「マジしょぼかったよね〜」みたいな感じでサーカスを後にする子供たち。

男の子たちはほとんどが2ユーロで旗をもらっていた。
旗を恨めしそうに眺める息子。
それでも、息子が持っていたサッカーボールを皆が蹴りはじめ、息子に笑顔が戻ってくる。
子供たちがもらったばかりの旗は、見る間に棒から紙がちぎれた。こんなものいらない、と、ママになすりつける子供たち。

誰が蹴ったか、わからなかったけれど、ボールは側溝のトンネルに入ってしまった。
一人のパパが、釣竿を使って取り出そうとしてくれたけれど、出てこない。
一生懸命やってくれたのだけど、なぜかテニスボールが出て来て、皆で大笑いした。

「雨が降ったら、きっと出てくるよ」
誰かがそう言った。



いつしか、トンネルにむかって叫び合戦に・・・。

翌日、息子が願った通り、一瞬大雨が降ったが、ボールは出てこなかった。

最近、泳ぎにはまって、プールに通ってます。

オーベルジュは毎日忙しく、お客さんが出入りする。
午前中は少しAさんの手伝いをして、午後はすっかり息子の相手という毎日が続いた。
なんだか申し訳なく感じていると、オーベルジュの皆が、
「まあ、秋からエコールに入ったら、あなたもいろいろできるから。今は息子第一に考えて、相手してあげて」
と言ってくれる。

なんだか本当に、無銭飲食をして子供と遊んでばかりいるようで、恐縮の日々・・・。

そんななか、W君の助けもあって、息子は少しずつ環境になじんでいく。



お友達にバギーに乗せてもらい、ご機嫌の息子。


小学生が、こんなのを乗り回せるって、フランスってすごいな。


むしろ、息子よりも出遅れた感がある、私であった・・・。

やっぱりフランス語はなかなか難しくて、日に日に上達して行く感じがしない。
英語もほとんど通じないので、Aさんに通訳してもらうしかなく、負担をかけているという申し訳なさがつのる。
人に迷惑をかけない、というのが身上(の、つもり)なのだけど、これが逆に、自分の語学を伸ばす足かせになっている気がした。なんとなく、ニヤニヤしてやり過ごしてしまう。
 しゃべれないから、自分のこともわかってもらえない。
私が日本で何をしていて、どんな暮らしをしてきたか、何も伝えることができない。
曖昧に微笑んでいる食いしん坊の変な東洋人おばさん(食べることだけは一人前以上)、 という印象だろうか。

外国に来ると、それまで積み重ねたすべてが0に見られるし、自分でも、どんなキャリアがあったかと不思議に思える。何もかも、かたちとして実在がないからだ。

でも、これこそが、私が求めたことではなかったか、と思う。
人生は、積み重ねではなく、積み減らしだと、岡本太郎は言った。
折り返し地点を越えてから、子供を連れてこんな旅をしていると、彼の言葉が本当に響く。
そういえば、太郎さんも、パリで「ノン!」と言ってたんだっけ。

ようし、明日からは、どう思われたって同じなんだから、ぶきっちょなフランス語をどんどんぶつけていこう。そうしよう。こんな機会は、なかなか得難いんだから。

と、志も新たまったところでw、
次回は、ふと出かけたパリの旅編、へ続きます!






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